春に想うは故郷のなにわ

short160303
魚が跳ねた。

その瞬間風が吹いて

堀の水面がやさしく細やかにきらめく。

「春や、春が来たんや……!」

普段流れもなく、ドブ色によどんだ市ヶ谷の堀が

こんなふうになるかと感心すると同時に

なんとも言えない感覚がこみ上げてきた。

「人間もまた自然の一部やさかい、身体が春を喜んどるわ。」

車窓を眺めながらそんなことを考えている間に

電車は飯田橋のホームへと、滑らかにすべりこんだ。

電車を降り、会社へ向かいながら

コンビニで雛あられを買おうと思う。

デスクについて付箋で今日のスケジュールを確認しながら

買ったあられを一つ、口にほりこむ。

実は、関東と関西の雛あられは大きく違う。

関東のそれはポン菓子に砂糖をまぶしたようなものだが、

関西はおかきに近い。

故郷のなにわとは違う、ふわふわと頼りなげな舌触りを感じながら

「今年の春でこっちきて何年目やろか。

何年いても大阪弁がぬけへんわ。ホンマかなんわ。」と思った。

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