その瞬間風が吹いて
堀の水面がやさしく細やかにきらめく。
「春や、春が来たんや……!」
普段流れもなく、ドブ色によどんだ市ヶ谷の堀が
こんなふうになるかと感心すると同時に
なんとも言えない感覚がこみ上げてきた。
「人間もまた自然の一部やさかい、身体が春を喜んどるわ。」
車窓を眺めながらそんなことを考えている間に
電車は飯田橋のホームへと、滑らかにすべりこんだ。
電車を降り、会社へ向かいながら
コンビニで雛あられを買おうと思う。
デスクについて付箋で今日のスケジュールを確認しながら
買ったあられを一つ、口にほりこむ。
実は、関東と関西の雛あられは大きく違う。
関東のそれはポン菓子に砂糖をまぶしたようなものだが、
関西はおかきに近い。
故郷のなにわとは違う、ふわふわと頼りなげな舌触りを感じながら
「今年の春でこっちきて何年目やろか。
何年いても大阪弁がぬけへんわ。ホンマかなんわ。」と思った。
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