【冬より夏が好き】

short

飛び立ったセミが、青空に優美な弧を描いた。

 

 

でもなぜか、そのまま停車中のトラックの車輪と

マッドガードの間に飛び込んでしまう。
次の瞬間トラックが走り去ったあとには、
変わり果てたセミがのたうちまわっていた。

断末魔。

一瞬前まであんなに元気だったのに…。
凄惨すぎる…。

一瞬茫然としたものの、
ハッとした私は今見たものを忘れようと
足早にその場をあとにした。

オフィスに入った瞬間、
クーラーの心地よさを感じながらデスクにすわる。

外にいると立っているだけで汗をかくぐらい暑い。

でもそれが最高だなー。
とはいえブロンズ色のカレンダーに目を向けると

「9月」の文字が目に飛び込んできて、

なんだか寂しくなってしまう。

最新の美容雑誌によると
「おしゃれな人はリップから秋色」らしい。
人が残り少ない夏を精一杯満喫しているときに、
早すぎやしないか。

ふとさっきのセミのことを思い出してしまう。
ただでさえ夏の一瞬の命なのに、きっとあのまま死んだはずだ。
今年はあのセミの分も、夏を満喫してやろう。
秋色リップはまだ早すぎる。
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物語に登場したブラウンのカレンダーはコチラ!

夏にぴったり。

http://www.replug.jp/fs/replug/c/triangular#