【手紙】


新天地へと旅立つ君へ

今この手紙を書きながら、ついでにクロスワードパズルを解いているのですが、
タテ3のカギが「やってはいけないことです。」とだけ書かれていて悩んでいます。
やってはいけないことって一体どんなことなんでしょうね。
哲学的なクロスワードパズルだなと思っています。
小3用なのにすごいですよね。
やってはいけないことだったのかはわかりませんが、君のデスクの引出しを壊したのは私です。
勘違いしないでほしいのですが、わざとではありません。
朝デスクを開けたときにウインナーが入っていたら驚くだろうなと思い、
こっそり入れておいたのですが、まさか中で引っかかって
二度と開かなくなるとは思いませんでした。
この場を借りて謝罪いたします。
ウインナーの強度に驚かされますね。
さて、先ほどからお別れの手紙っぽくない内容が続いております。
これはなぜかというと、ひとつどうしても心に引っかかっていることがあるからです。

明日のお別れ会でこの手紙と一緒にスイートピーの花束を渡されると思うのですが、
その花言葉が「門出」「優しい思い出」らしいのです。
今回の状況にとてもぴったりな花があるなぁと感心していたのですが、
そんなことってあり得るのでしょうか。
こんなピッタリな花がこの世にあるのでしょうか。
端的に言えば、都合がよすぎませんかってことです。
こんな都合のいい花があっていいんですか?
これは陰謀ですか?
ということが気になってまともにお別れを言う気になれません。
申し訳ありません。
やはり、知らない誰かの都合で考えられた言葉で君を送り出すのはよくないですよね。
私にしか言えない言葉で、私たちの人生の教訓となる言葉を送りたいのです。
私たちの生活には花よりももっと身近なものがあると思います。
道に転がっている石ころや、空き缶などです。
そうした物の方がより私たちの人生を映し、
意味のある言葉を投げかけてくれるのではないでしょうか。
そこで私、いいものを考えました。
鉄言葉です。
この手紙の締めくくりとして鉄と鉄言葉を君に贈りたいと思います。
君に贈りたい鉄は「マンホールの蓋」です。
マンホールの蓋の鉄言葉は「隠したい思い」です。
先ほど引出しの件を告白しましたが、
もうひとつ、君のジャケットのポケットにみちよさんを騙ってラブレターを入れ続けていたのも私です。
勘違いしないでほしいのですが、冗談でやっていたわけではありません。
毎日誰かから愛されているという実感があったほうが
無いよりはましかなと思い、継続させていただいておりました。
この場を借りて謝罪いたします。
では、次のステージでの健闘をお祈り申し上げます。

PS.
手紙の最後にその他の鉄言葉を載せております。
時間があるときに読んでいただけると幸いです。
基本的に道を歩いていて目につく鉄ばかりですので親しみやすいと思います。
そして、いつの日か私あてに鉄言葉をいただけると嬉しいです。

<鉄言葉一覧(あいうえお順)>
アスファルトに埋まっている謎のネジのようなもの:深き謎
街頭:上から目線
ガードレールの類:守るよ
車:狂気
自動販売機:小太りで裕福なおじさん
信号機:仕切りたがり
捨てられたビニール傘の骨組:もう無理
電柱に刺さっている足場となる棒:上昇志向
排水溝の蓋:小銭との別れ
バス停の横にあるぼろぼろのベンチの足:頼りない支え
標識:予感
ぺったんこにつぶれた空き缶:やりすぎ
放置自転車:待ち人来ず
マンホールの蓋:隠したい思い
大切な人へのお祝いにピッタリなメッセージカードはこれ。
花束やブーケにして贈れば喜ばれること間違いなし。
http://www.replug.jp/fs/replug/c/hanakotoba_kit